岩松アシュラム

主の家の教会牧師 寺尾 雅生

 岩松アシュラムは愛媛県の西南端、宇和島市にある岩松教会で開催されている。このアシュラムには二つの特異な面がある。その一つは、岩松教会が主宰するアシュラムではないにもかかわらず、「岩松」という教会の名が冠せられていること、もう一つは、必ず岩松教会を会場に行われることである。この背景には、岩松教会を設立し、その会堂と付属する建物を献げた一人の兄弟(中川義雄兄)の祈りがある。その兄弟はアシュラムに身を捧げた榎本保郎師に出会い、アシュラムの素晴らしさを知った。そしてアシュラムができるようにと、宿泊施設のある教会施設を祈り求め、周りの人々から無謀と言われる中で主にのみより頼み、遂にそれを建て上げることができた。そしてそれを主に捧げたのである。彼のアシュラムへの思いと祈りが教会を設立させ、田舎には不釣合と思われるほどの、コンクリート造りの大きな建物を建てさせたのである。

しかし残念ながらこれが建って後、約30年間ここでアシュラムがされたことはただの一度もなかった。彼が、ぜひここでアシュラムを主宰して欲しいと願っていた榎本師は、建物の完成を見ずに天に召された。それにこの地は今でこそ高速道路が通じているが、当時は何処から来るにも不便で、肝心のアシュラムに使われることはなかったのである。やがて兄弟も召され、いつしかアシュラムのことは遠い昔のことになってしまった。しかし兄弟のアシュラムに懸けた思いと祈りを、主はお忘れにならなかった。

今から6,7年前、松山アシュラムに参加した数人の兄姉たちが、ここ宇和島の地で毎月持たれている朝祷会に出席するようになった。そこで岩松教会の兄姉と出会い、岩松教会の建物のこと、またそれを建てた兄弟の思いと祈りのことを聞いた。やがてその祈りの交わりの中から、岩松教会を会場にアシュラムができたら、という思いが皆の中に起こされていった。それはやがて朝祷会共通の祈りとして、主の前に積まれていったのである。そして遂に3年前、2011年にこの岩松教会を会場に、一日アシュラムの形で、第1回岩松アシュラムが開催されるに至った。2013年の第3回目からは一泊二日のアシュラムとなり、今年、2014年の第4回岩松アシュラムも祝福の内に守ることができた。

このように岩松アシュラムは、「アシュラム」と「朝祷会」という二つの祈りの運動の連帯により誕生し、この二つの祈りの交わりを通して、準備され実行されているのである。それ故、岩松アシュラムは必ず最初に朝祷会が行われ、引き続いてアシュラムのプログラムが始められるのが恒例である。

 岩松アシュラムに関わっている教会のほとんどは、非常に少人数の教会である。それ故一つの教会だけでできることは限られている。しかしアシュラムのために互いに祈り合い、励まし合い、協力していくことで、一つの教会だけでは与ることのできない、より大きな主の御業に共に与かることができている。この主の御業に与かることで、今までにない大きな喜びと力が与えられている。アシュラムを準備する者たちは、それぞれ属する教会は違っているが、祈りによる一体感、主に在る一体感が与えられている。この一体感と喜びは、それぞれが小さい教会に属する者たちである故に、より大きく、より特別に感じられるのだと思う。そしてもっと、もっと、更に、更に、主の豊かな御業に与かりたいとの思いに満たされるのである。

 主は、岩松教会を捧げた兄弟の祈りと思いを、今実りあるものに変え、彼が捧げた建物を再び生かして用いてくださっている。それと同時に主は、そこで共にアシュラムを守っている私どもにも、新しい思いと祈りを与え、ご自身の豊かな実を結ぶように、新しい力に満たしてくださっている。

主の御名を心から崇め賛美せずにはおれません。ハレルヤ!